ケルト的キリスト教と東方キリスト教:コスモス主義とポストモダン主

私は、ずいぶん以前に(あいまいな言い方であるが、20年くらい前である)、キリスト教で「まっとう」なのは、ギリシア正教アイルランドないしケルトキリスト教であると述べていたものである。その意味は、大地への志向である。両者とも、大地、土を感じさせたからである。
 さて、今日というか、昨日、たまたま、読んでいた本に私の考えを肯定する叙述があり、わが意を得たりというか、あまりにもぴったりと一致するので、不可思議な感じでもある。とまれ、それを簡単に引用したい。本件に関しては、後で、検討したい。

「そもそもこの地域(アイルランド)に入ってきたキリスト教そのものが、ケルト人の宗教と習合しやすい性格のキリスト教だったためということもあるのではないだろうか。それはつまり、このキリスト教ローマ・カトリックではなく、ローマ・カトリック世界の周辺を通って、はるばるこの西の果てまで伝わってきた東方キリスト教だったのではないかということである。
 このような想像を裏付けるようなものとして、たとえば、ケルトキリスト教独特の聖アンナ崇拝を挙げることができる。」
ケルト神話と中世騎士物語 「他界」への旅と冒険』田中仁彦著 中公新書 p.25
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p.s. ニーチェの大地主義も、この点と関係するだろう。ドストエフスキーの大地主義も、ここから説明できるだろう。

p.p.s. 大江健三郎の四国の森や谷間へのこだわりも、これに関係するだろう。一般にキリスト教の問題は、大地を否定して、天を志向する点である。私は、戦後日本の大地を軽視する姿勢に疑問をもっている。土地が、担保となったり、資産となったりすることが、問題である。もっとも、最近は、ポスト戦後、ポストバブル、ポストモダンということで、土地・大地への回帰があるようだ。

3p.s. 大事なことをつけ加えると、折口信夫の「マレビト」信仰や「常世」信仰は、ケルト的他界観と通ずるだろう。すると、ヤポネシア的神話宇宙とケルト的神話宇宙は類型的であろう。これは、母権的世界観である。
 また、D.H.ロレンスのコスモス主義であるが、深く大地と結びついている。大地的コスモス主義とも呼べるものである。思うに、ロレンスのコスモス主義とは、ロレンス一流の陰影があるものの、普遍的な世界観なのである。ヤポネシアケルト、東方キリスト教、折口、D.H.ロレンスドストエフスキーニーチェ等は、西方キリスト教が大半の地域で破壊した普遍的母権的根源的世界観を保持し、表現しているのだろう。これは、大地・宇宙的世界観である。一言で言えば、コスモス的世界観である。(前ソクラテス期の哲学者も背景にもっていたものであろう。)
 これは、不連続的差異論から見ると、イデア界の世界観ないしイデア・メディア境界の世界観である。現代、ポストモダニゼーションの時代にあって、この世界観が、らせん的に回帰していると考えられるのである。簡単に言えば、イデア界の回帰であり、これが、コスモス的世界観を喚起するのである。ポストモダン・コスモス・ルネサンスとも言えよう。
 現代はきわめて意義深い時代である。古代/東洋的世界観(母権的世界観)とポストモダン主義が結合して進展する時代だからだ。

4p.s. 村上春樹氏であるが、彼は、ポストモダンの日本を、探索しているが、彼が真に、無意識裡に求めているものは、一言で言えば、根源的自然(彼の小説に出てくる「風」や動物がそれ示唆している)である。彼はポストモダンの都会に、それを求めているのだ。しかし、今一歩、それへ達することができずにいる。それは、根源的自然が欠落しているポストモダンの日本の都会で探求しているからである。自分が真に求めているものが無いところで、求めている矛盾が、彼の小説思考にあると思うのである。また、彼の読む現代アメリカ文学も、根源的自然の乏しいもので、不適切であると思う。彼は、ケルトブリテン文学を読むべきである。そこには、濃厚な土の臭い、「地霊」が存しているのである。たとえば、トマス・ハーディの小説を、彼に奨めたい。

5p.s. イスラーム教も、実際のところ、二重構造であろう。イスラム教の信者の庶民は、コスモス的な宗教性を内在していると思う。イスラム教は、このコスモス的宗教を内に取り込んだ一神教ではないのか。だから、多元主義を帯びるのではないだろうか。キリスト教より、はるかに、「多神教」的である。とまれ、コスモス=イデア界の世界観を取り戻すべきであるし、今や、再生してきているのだ。

Great Cosmos of Idea World is Just Coming!
Postmodern Innovation is Tranforming the Contemporary World
Into Plural Micro Cosmos!