複合型反動精神社会症候群:特異性自我はどのようにして、連続・同一

複合型反動精神社会症候群:特異性自我はどのようにして、連続・同一性自我・近代的自我となるのか


本件の問題に関しては、私は、ある種の人を念頭において考えている。つまり、自らの特異性・差異を排除・隠蔽して、連続・同一性へと同化している自我、即ち、近代的自我をもつ人たちである。
 本来、差異と同一性の二重性が、自我にはあるが、近代主義は、前者を否定して、後者中心の近代的自我を形成したと言えよう。そして、これが、今日の世界・社会の「狂気」を生んでいると考えられる。
 これまで、執拗に本件について検討を重ねてきたが、そして、それなりに、解明はしてきたが、本質洞察がいまだに形成されていないと思われるので、ここで、議論したい。
 問題の核心の一つは、自我意識の位置である。「わたし」の意識である。不連続的差異論の視点から見ると、メディア界においてプラス・エネルギーが発生して、それが、連続・同一性自我志向性と形成する。本来、メディア界的自我、差異自我があるのだが、それが、連続・同一性作用によって、差異自我が否定・排除・隠蔽されるのである。適切に言えば、差異自我が、同一性自我に覆われてしまうということだろう。
 本来、差異として存する自我意識が、連続・同一性化されて、連続・同一性自我意識となり、本来の差異を排除・隠蔽するのであり、この排除・隠蔽が、暴力、即ち、自我内部、自我外部への差異・他者への攻撃・暴力欲望となっているのである。
 この差異自我意識の、連続・同一性自我意識への変容は、仮象自己欺瞞・虚構・虚偽であると言える。つまり、連続・同一性自我意識とは、不誠実なものであるのである。差異自我意識の糊塗なのである。プラス・エネルギーはそのような自我意識の自己欺瞞をもたらすのである。
 しかしながら、これまで述べたように、マイナス・エネルギーによって、この連続・同一性自我意識とは別に、新たに、本来の差異自我意識が発生すると考えられるのである。このとき、連続・同一性自我意識と差異自我意識は分裂・衝突・葛藤するのである。しかし、問題は、連続・同一性構造の超越論形式(カント)によって、この差異自我意識を純粋化できないのである。反動化してしまうのである。結局、差異自我意識は、連続・同一性自我意識によって、取り込まれてしまうのである(参照:大澤真幸氏の「アイロニカルな没入」)。
 あるいは、そのようでない場合、即ち、連続・同一性自我が、イデオロギー的に、差異自我意識を否定・排除する場合があるのである。そう、私が、ここで、問題にしたいのは、この場合である。つまり、連続・同一性構造の拘束というよりは、連続・同一性自我意識の反動の場合である。正しく言えば、どちらも反動であるが、前者は無意識的であり、後者は意識的である。
 後者は近代主義イデオロギー的であるが、また、なにか「遺伝子」ないし気質・性格に関係するように思えるのである。即ち、個人的内在的要因である。ここで、先に述べた、弱い差異「遺伝子」(以下、遺伝子)が関係すると考えられるのである。弱差異遺伝子は、差異自我意識のエネルギーが弱いので、連続・同一性自我意識が、差異自我意識の否定・排除・隠蔽を継続すると考えられるのである。
 だから、問題はかなり複雑である。「ポストモダン」状況においては、マイナス・エネルギーが賦活されて、差異自我意識が発生する。しかし、連続・同一性構造のために、それが、反動化する傾向がある。これが一般状況である。しかし、それだけでなく、差異遺伝子の強弱の個人的相違があるので、弱差異遺伝子の個人の場合、連続・同一性自我意識が強力に作用して、差異自我意識を否定・排除・隠蔽し続けるのである。連続・同一性中心自我意識と言ってもいいだろう。
 だから、結局、「ポストモダン」状況において、「アイロニカルな没入」と弱差異遺伝子による連続・同一性中心自我意識の両者が重なって、精神病的な連続・同一性自我意識が発生すると言えるのである。これが、現代社会、日本や世界の近代的自我狂気の本体であると言えるだろう。弱差異遺伝子と「ポストモダン」的反動が結合した、精神・社会病理現象なのである。これは、人類(サル人類)、西洋文明の終末現象と言うのが正確な診断であろう。

p.s. 補足すれば、純粋な差異自我意識、特異性・単独性をもつ差異自我意識を形成(ビルドゥング;「教養」と訳されてきた)する文化、いわば、差異文化(芸術や宗教や哲学等)が、現代において、軽視・軽蔑・無視等されていること(例えば、石原都知事による都立大学ツブシ、等)も、この社会・精神病理の一つの要因だと考えられるのである。これは、拝金主義=金融中心資本主義が生んでいるヴァンダリズム(文化破壊主義)である。
 整理すると、


1)連続・同一性構造の無意識的反動
2)弱差異遺伝子の反動
3)拝金資本主義的ヴァンダリズム的反動


となる。少なくとも、この三要素が複合化したものが、現代日本・世界の精神・社会病理現象の原因と診断されるのである。複合型反動精神社会病理シンドロームである。