ハイデガーの『存在と時間』とプラトニック・シナジー理論(PS理論)
ハイデガーの『存在と時間』とプラトニック・シナジー理論(PS理論)
テーマ:プラトニック・シナジー理論
フッサールもそうであるが、ハイデガーの分析的論考は、きわめて綿密であり、その微に入り細をうがった文体とともに、読解するのに多大な知力を要する。有り体に言えば、うんざりする。
とまれ、「死へとかかわる存在」としての現存在を説く箇所からは、単独性(特異性)の問題が明瞭になっていて、これは、ある意味で、分かりやすい事柄だと思う。そう、ハイデガーは、存在ないしは現存在を説くことで、キルケゴールやニーチェの問題にした単独性・特異性の存在論的考察をしていると言っていいだろう。(私は、ドゥルーズはハイデガー哲学に正対していないと思うが、それは、ドゥルーズが、ハイデガー哲学の圏内にある証拠の一つではと推測する。)
ハイデガーの存在ないしは現存在であるが、PS理論では、Media Pointと言えるだろう。正確に言えば、存在がMedia Pointに当たり、現存在とは、Media Pointが現象的に顕現している様態を意味しているだろう。
ハイデガーのいう非本来的自己や世人とは、Media Pointの同一性構造から発生した自我のことと言えよう。そして、本来的自己とは、同一性構造から乗り越えて、Media Pointの差異を積極的に開いた自己であると言えよう。
PS理論では、Media Pointが時間(固有時間)になるので、当然、ハイデガーの存在が時間ないしは根源的時間に関わるということは、納得できることである。
そのように見ると、ハイデガー現象学は、ほとんどPS理論を先取りしているように見えるかもしれない。しかしながら、Media Pointにおける根源的差異が、即非的であることは、ハイデガーは説いてはいない。また、根源的差異がイデア界・虚界性をもっていることを明確にはしていない。(もっとも、後期ハイデガーは、その方向に向かっていると思うが。)
そうすると、ハイデガー現象学は、差異の即非性と連続性と不連続性との即非性には、達していないことになると考えられる。
思うに、日本の哲学研究は怠慢ではないだろうか。鈴木大拙や西田幾多郎が、禅から重要な叡知を受けて、理論化したのにかかわらず、それを、現象学へ適用して、発展させなかったことは、怠慢の度を越して、ほとんど犯罪的ではないだろうか。その罪とは、知の進化に対する罪である。
さて、最後に、少し話しが飛ぶが、現代西洋哲学の第一級の問題として、ハイデガーとデリダの関係があるだろう。私見では、ポスト・モダン哲学は、ハイデガー現象学に端を発している。(フッサールは、シェリング、キルケゴール、ニーチェと並んで、偉大な先駆者である。また、ほとんど即非論理を説いたウスペンスキーも先駆者である。)
私は、デリダとフッサール現象学に関しては、既述したが、簡単に言えば、デリダは、フッサールの超越論性によって発見された、一種のイデア性を否定しているのである。そして、差異と同一性が連続した差延を説いているのである。
では、デリダとハイデガーの関係はどうなのだろうか。私は、よく知らないが、先に私は、ハイデガーの存在を差延と呼んでいる節があることを言った。ただし、存在には、イデア界・虚界性が入ると思うが、差延には、基本的には入らないだろう。とまれ、思うに、現存在と差延が似ているだろう。なぜなら、現存在には、同一性構造もあるし、差異の原点もあるからである。しかし、差延は、存在のもつ超越性を否定していると思う。(この超越性であるが、通常の超越性ではなく、PS理論における虚数である。虚的存在である。後で、説明したい。)
p.s. 以上では、存在に超越性を認めているが、今(平成20年2月4日)では、認めない。何故なら、ハイデガーの存在には、差異共振性が完全に欠落しているからである。
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