(無意識的な)怒りや憤激とは何か:今日における短絡する精神の病理

(無意識的な)怒りや憤激とは何か:今日における短絡する精神の病理とトランス・モダン精神への進展


テーマ:精神


今、フェミニズムの古典の本(『自分だけの部屋』)を読んでいて、そこに、女性の劣等性を論ずる男性の精神を分析して、そこに怒り、憤激があると指摘してあった。
 天才的な作家であるから、鋭敏な洞察力をもっている。私は、この怒りや憤激というものが、今日、日本(に限らないが)社会の精神病理を説く鍵ではないかと感じた。
 思えば、オウム真理教の信者たちの中にも、社会への憤激があったと思う。これが、反社会的破壊行動へと駆り立てたと言えるのではないだろうか。ニーチェ哲学で言えば、ルサンチマン(怨恨)である。【p.s. 私見では、中沢新一グノーシス主義を説いていたが、オウム真理教に肩入れした彼の精神には、ルサンチマンが深く根差していると思う。】
 さらに思えば、小泉構造改革ファシズム」も、社会にあるルサンチマンにつけ込んだ現象であったのであり、今日でもルサンチマンは重低音として蔓延していると言えよう。これが、短絡的な暴力行為・凶悪な犯罪の根因ではないかと思われるのである。
 ルサンチマンについては、これまで、同一性に傾斜している人間の精神から発生すると述べてきた。差異における反感が発生し、差異自体を肯定的に知性化できずに、暴力的情動であるルサンチマンが発生するというように考えた。
 ここに、怒り・憤激の要素を見ることができるし、そう捉えることで、今日の精神病理やそれに基づく犯罪を説明できるように思えるのである。
 では、怒り・憤激とは何か。つまり、短絡的な怒り・憤激とは何かということである。端的に言えば、ここには、他者の欠落・欠損した、自己同一性中心主義があると言えよう。
 だから、近代的自我・近代合理主義の病理ということができるし、父権主義の病理ということができると思う。それらは、端的に、同一性主義であり、差異・他者を否定・排除するのである。
 つまり、自己同一性主義の欲望中心であり、それに反する・否定する他者・差異を暴力的に否定・排除するといいうことである。
 これは、端的に、近代主義の帰結であると言える。差異を否定・抑圧・排除・隠蔽する近代同一性主義の帰結であると考えられるのである。
 (この無意識的な)怒り・憤激について、明確に述べよう。それは、自己同一性欲望主義がもつ差異への怒り・憤激ということだろう。それは、我が侭の極致である。独善・独断・専断的な自我主義・利己主義の極致であろう。
 一見、怒りや憤激には一見、倫理性・道徳性があるように見えるかもしれない。しかし、それは、いわば、偽装された倫理・道徳に過ぎず、本体は、究極の自己同一性欲望主義・利己主義であると考えられるのである。
 そう、ハイパー・モダンがここにあるのである。差異の究極的な否定がここに、怒り・憤激として出現していると考えられるのである。
 ポスト・モダンは、差異と同一性との混淆に帰結したが、今日、純粋差異・絶対的差異・特異性を肯定し、共振・共鳴するトランス・モダンの知性へと転換する時点に達していると考えられるのである。

p.s. 付け加えると、今日、差異が賦活されているので、自己同一性欲望中心主義は、反動的に、あるいは、狂気的に、衝動化していると考えられるのである。そう、差異のエネルギーの反動(狂気)がそこには入っていると考えられる。【p.s.  この点は精緻に考察する必要がある。同一性ルサンチマンは、差異エネルギーを排除するので、エネルギーが枯渇するのである。そして、心に真空状態が生じるのである。ここには、余裕、遊び、空間がないために、ショート(短絡)ないしは没入が生起すると考えられるのである。この真空的ショートと反動化された差異エネルギーが結びつくのではないだろうか。】

p.p.s. ルサンチマンによる怒り・憤激は、ファナティシズム(狂信主義)に通じていると考えられる。ブッシュ/ネオコンの発生の根因もここにあるのではないだろうか。(ルサンチマン・ファナチシズム、又は、同一性ルサンチマンファナティシズムという言葉を造語していいのではないだろうか。
 後で、大澤真幸氏の「アイロニカルな没入」の概念と比較検討してみたい。

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「勉強しろと言われ反感」 埼玉・父刺殺の長女

2008年7月20日 朝刊

 埼玉県川口市のマンションで19日、男性会社員(46)が刺されて死亡した事件で、殺人未遂の現行犯で逮捕された長女(15)が、武南署の調べに「両親から『勉強しろ』と言われることに反感があった」と供述していることが分かった。司法解剖の結果、男性の死因は包丁が肺まで達したことによる出血性ショックと判明した。

 長女は当初、取り乱して意味不明のことを話していたが、次第に落ち着きを取り戻し「父親とは普段からあまり会話はなかった」とも供述、武南署は長女に刑事責任能力があるとみて、さらに詳しい動機を調べる。

 長女が通うさいたま市内の私立中学校では校長らが19日午後、記者会見。長女の成績は3年生で中位で、期末テストで成績が下がった英会話の追試を18日に受ける予定だったが無断で欠席。担任が自宅に電話すると、小学6年の長男(12)が「風邪で寝ている」と答えたという。

 長女は3年生になり6月に1日欠席しただけ。校長は「いじめなどのトラブルはなかった」と戸惑いがちに話した。

http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008072002000059.html?ref=rank

長女「父親とはあまり会話なかった」 刺殺事件

2008年7月19日23時43分


 埼玉県川口市のマンションに住む製薬会社員の男性(46)が、中学3年生の長女(15)に包丁で刺され、死亡した事件で、殺人未遂容疑で逮捕された長女が「父親とはあまり会話がなかった」と話していることが分かった。逮捕直後には「お父さんが家族を殺す夢を見た」などと話していたといい、県警は、長女の父親に対する思いと事件との関連を慎重に調べている。

 県警は19日午後、父親を司法解剖し、死因は肺を刺されたことによる出血性ショックと発表した。調べに対し、長女は「寝ているお父さんの上半身を2回刺した。その後のことは、気が動転していて覚えていない」と話したという。父親については「『勉強しろ』と言われて『はい』という、やりとり以外の会話はあまりなかった」といい、「大変なことをしてしまった」と反省している様子だという。動機につながるような話はしていないという。

 一方、長女の母親(49)は「2人は大きなけんかもなく普通の父娘で、動機に思い当たることはない」と話しているという。

 これまでの調べでは、同日午前3時ごろ、別の寝室にいた母親が、長女の「ギャー」という叫び声と父親のうめき声を聞いたため、父親と長男(12)の寝室に駆けつけて部屋の電気をつけると、長女はベッドの上でぼうぜんとし、台所にあったはずの文化包丁(刃渡り20センチ)がベッドに置かれていた。父親は吐血し、母親に「警察と救急車を呼んでくれ」と話し、警察官が駆けつけた時は床でうずくまっていた。長男は二段ベッドの上で寝ていて、母親が部屋の電気をつけるまで気がつかなかったという。

 県警によると、長女と父親は事件前日の18日昼、長男と3人で、自宅近くのファストフード店で昼食をとり、その後、「夕食はカレーにしよう」という話になり、スーパーに立ち寄った。午後5時ごろから、自宅で父親と長女でチキンカレーを作ったという。

 長女が通っていた私立中学校によると、長女は同日、英会話の追試を受ける予定だったが、学校に来なかった。担任が自宅に電話すると、弟が「風邪で寝ている」と答えたという。

http://www.asahi.com/national/update/0719/TKY200807190222.html


川口・父刺殺:前日一緒に買い物 母親「仲よかった」

 埼玉県川口市の私立中学3年の長女(15)が父親(46)を刺殺したとされる事件で、母親(49)は県警武南署の調べに「父親と長女は仲がよかった」と話している。長女と父親は事件前日に一緒に買い物にでかけ、カレーを作っていた。一方で、長女は「両親に勉強しろと言われると、やる気がなくなった」と供述している。学校によると最近は成績が下がり気味だったが、他にトラブルがなかったかを含め動機の解明を慎重に進める。

 調べでは、長女は両親と小6の弟(12)の4人家族。長女は19日午前3時ごろ、寝室で寝ていた父親の胸などを、台所にあった文化包丁で刺して殺害した疑い。3部屋に分かれて寝ていて、父親と弟が同じ寝室だった。司法解剖の結果、傷は胸と額の2カ所。死因は肺を刺されたことによる出血性ショックだった。

 調べに対し、長女は当初、「お父さんが家族を殺す夢を見た」という趣旨の話をしたが、その後は「上半身を2回ぐらい刺したが、後のことは気が動転してよくわからない。大変なことをした」。父親については「普段から会話はあまりなかった」と話している。勉強するよう注意されても言い争ったことはないという。落ち着いた様子で取り調べに応じているが、動機については話していない。

 母親の警察への説明によると、長女と父親の仲はよかった。18日は父親は仕事が休み。昼間に父親と長女、弟で買い物に行き、夜は、父親と長女が作ったカレーライスを家族で食べた。その後、両親と長女はビデオを観賞。弟は勉強していた。【浅野翔太郎、小泉大士、山崎征克】
 ◇将来の夢は薬剤師

 長女が通っていた埼玉県内の私立中学は事件を受けて19日午後2時から校長らが会見した。

 それによると、ほとんど学校を休んだことはなかったが、18日の英会話の追試験を無断欠席したため、担任が自宅に電話すると、弟が「姉は風邪で寝ている」と説明したという。終業式は22日の予定。

 成績は中ぐらい。2年の初めまでバスケット部だった。聞かれたことにははっきり答えるが、自己主張するタイプではない。将来の夢について、入学時や1月にあった担任らとの面談では「薬剤師」と伝えていた。教頭は「製薬会社に勤める父親を尊敬していると思った。かなり勉強しないと難しいぞと言うと、『頑張ります』と答えた」と話した。

 担任は「転校する生徒へのメッセージレター作りを進んで引き受け、優しい心の持ち主」と述べた。

 現場のマンションは川口市北部の住宅街にある。7階建てで約70世帯が入居。小学校が同じで別の中学に通う女子生徒(13)は「先週もマンション内で長女とすれ違うと、笑顔であいさつしてくれた。優しくて頭がよかった」と驚いた様子だった。家族の知人は「18日午後に父親と長女、長男が外出先から帰宅する姿を見かけた。仲がよさそうだったのに」と話した。【稲田佳代、弘田恭子】

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080720k0000m040113000c.html

夕食後にトラブルか=衝動的に父親刺す?−中3少女、供述に揺れ・埼玉県警

7月19日20時30分配信 時事通信

 埼玉県川口市のマンションで、男性会社員(46)が中学3年の長女(15)に殺害された事件で、長女が衝動的に父親を刺した可能性が高いことが19日、埼玉県警の調べで分かった。県警は家族での夕食後に、父娘の間に何らかのトラブルが生じたとみて調べている。
 調べなどによると、長女は18日、学校を休み、父親と長男(12)の3人で買い物に出掛けていた。夕方には父親と長女が仲良く一緒にチキンカレーを作り、午後11時ごろまでは特に変わった様子はなかったという。
 事件後も長女は放心状態で逃走する様子はなく、凶器の文化包丁も自宅の台所にあったものだった。
 このため、県警は18日深夜以降、2人の間にトラブルが起き、長女が衝動的に包丁を持ち出して父親を殺害したとみている。司法解剖の結果、父親の死因は出血性ショック死だった。 

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080719-00000094-jij-soci