イデア・不連続的差異とは、超越論(内在論)的包摂理性・知性・概念

イデア界に存する「概念」は、包摂的な理念である。これは、デカルトの延長と思惟を包摂しているのである。それは、当然、物質でもなければ、観念でもない。イデアであるのだが、イデアの意味が、皮相に捉えられているので、注意が必要である。これまで、このイデアを不連続的差異と呼んでいる。即ち、不連続的差異=イデアである。
 わたしたちが見る世界、現象界とは、このイデアイデア界の反映である。それを近代は物質の世界と見ているが、それは誤りである。物質とは、イデアの延長と見るのが正しいのである。そして、わたしたちの意識、心、知性、言語、精神、観念、感情、感覚等は、イデアの思惟と見るのが正しいだろう。
 スピノザは、デカルト哲学を受けて、いわゆる心身平行論を立てた(『エチカ』)。それは、実体/属性/様態の三層論である。そして、延長と思惟を属性と見た。スピノザは、能動的観念という主観性を肯定・能動化することで、創造的主観性の思想を構築して、実体を把握する理論を立てた。とまれ、スピノザは、能動的観念を精神における観念としてしているが、それは、不連続的差異論から見ると、メディア界の心身性・心身相補性、想像力をスピノザは、活用していると考えられるのである。そして、心身性・心身相補性・想像力の創造化によって、ほぼイデア界的概念に達していると考えられるのである。思うに、スピノザ哲学の独創的画期性は、思惟と延長との結節点である想像力を把捉して、それから、イデア界への道筋を提示した点にあるだろう。これは、いくら強調しても、強調しきれないくらいの天才的ブレークスルーであろう。これは、実は、内在的超越性、つまり、超越論的哲学への進展である。そして、後に、フッサールがこれを、超越論的主観性、超越論的現象学として構築するのである。また、ドゥルーズガタリは、『哲学とは何か』において、現象学を批判して、内在性の哲学を主張するのであるが、しかし、内在性の理論とは、超越論にほかならないと考えられるのである。つまり、内在性の哲学とは、スピノザフッサールの哲学の延長にあるのであり、彼らの独創ではないのである。ただ、超越論性を内在性に変えただけだと考えられる。(もっとも、ハイデガーは、フッサールの主観性を存在に変えて、超越論性に存在性の側面を付与したとは言えるだろう。しかし、正しくは、主観性且つ存在性であるので、ハイデガー存在論は、一面的であると考えられる。)
 結局、不連続的差異論は、以上の哲学を統一したものであり、換言すると、プラトン哲学の差異論的完成である。これにより、近代主義を真に克服されたと言えるだろう。新のポスト・モダン理論の誕生と言えるだろう。これにより、科学は、全くあたらしいものとなるだろうし、認識の大変革となるだろう。上記したように、物質はイデアの延長として、精神はイデアの思惟として把握され直す。そして、想像力は、延長と思惟の相補性であるメディア界の「力」としての把捉されるだろう。そして、ここから、イデア界の理念(イデア)への直観力が創造されるだろう。
 さて、ここで、光とは何かという問題を簡単に考えよう。光は想像力的なもの、メディア界的なものと考えられる。それは、延長と思惟を媒介するものである。E=mc^2である。そして、光を介して、「精神」は、「神性」を直感すると考えられる。これは、光=想像力を介して、イデア界を直感すると考えられる。なぜならば、光=想像力は、イデア・メディア境界から発出して、ここで生成消滅を繰り返していると考えられ、このイデア・メディア境界は、当然、イデア界に接しているからである。「神」=イデア界は確かに光を創造するが、しかしながら、光の根源として、超光としての「神」=イデア界を考えることができる。これが、阿弥陀如来(無量光)、ゾロアスター教神道等が表現しているものと考えることができる。「光あれ」という神とは、イデア界であり、その光の根源である。この超光であるが、これは、逆に、闇と見てもいいだろう。超光=超闇である。D.H.ロレンスが、黒い太陽dark sun、暗黒の神dark godと呼んだものが、これであろう。これは、プラトンの善の太陽である。
 では、このイデア界と現代物理学で問題となっているダークマターダークエネルギーとはどう関係するだろうか。これは少し難しいだろうが、ここで直観で言えば、ダークマターダークエネルギーも、イデア界を指しているのではないだろうか。ブラックホールも、イデア界を示唆しているのではないだろうか。この潜在界であるイデア界を、ダークマターダークエネルギーは指しているのではないか。この問題は複雑である。他の可能性としては、イデア・メディア境界がダークエネルギーを指すか、あるいは、反世界がそれである。この問題は後で再検討したいが、今の直観では、イデア界がそれに当たる。