マイケル・ポランニーの暗黙知と不連続的差異論:toxandria氏の考察

マイケル・ポランニーの暗黙知と不連続的差異論:toxandria氏の考察に基づいて


先に、toxandria氏のマイケル・ポランニーの暗黙知や「dynamo-objective coupling」の概念が、不連続的差異論と共通するものがあるのではないかと述べたが、ここで、それについて少し考えてみたい。
 私は、かつて、マイケル・ポランニーの『暗黙知の次元』やレヴィ・ブリュールの『原始神話学』を読んだことがあるので、本件について、ほとんど自明に近い直観をもつのである。一言で言えば、暗黙知や「dynamo-objective coupling」は、不連続的差異論におけるメディア界領域を対象としているということである。つまり、メディア界的思考は、暗黙知的であるし、また、「dynamo-objective coupling」的であるということである。
 この点を少し説明すると、暗黙知とは、現象界において隠れている「知」を想定して、それを作業仮説として、発見や創発を為すわけであるが、この探求過程において、主体は、メディア界を認識の「フィールド」にしているわけであり、そこから形成される概念が、暗黙知である。これは、思うに、スピノザの『エチカ』における能動的観念から共通概念へと上位化する認識作用と通じるように思える。
 そして、「dynamo-objective coupling」であるが、これはまさに、メディア界を探求している主体の認識状態である。つまり、主客相補性の状態である。主体は、客体と連結しつつ、分離している(ドゥルーズガタリの「離接」にほぼ相当する)状態の「認識」をするのである。これは、近代的な主客分離二元論ではなくて、主客相補的二元論であり、物理学ならば量子力学に相当する領域であり、デリダ脱構築哲学に相当する領域とも言えるだろう。これは、前近代的世界観であり、また、一つのポストモダン的世界観である。そして、フッサールの説く「生活世界」の一つに相当すると考えられるのである。現象学的還元をして生起する「生活世界」である。
 しかしながら、この認識方法の問題点は、大澤真幸ODA ウォッチャーズ両氏の「三幅対」論に表明されているだろう。つまり、前近代とポストモダンが、相互依存して、後者が反動化することである。 toxandria氏も述べているように、知のイデオロギー化・体制化も生じるのである。確かに、新しい知を創造するための必要な方法ではあるが、裏面の反動性を明確に意識する必要がある。これは、決定的なポイントである。すでに、反動的ポストモダンと能動的ポストモダンということで指摘しているように、いわば、「暗黙知」と「dynamo-objective coupling」の不連続化が必要なのである。これによって、「暗黙知」はイデア界の包摂理念となり、イデオロギー化・体制化されることはなく、不連続的差異の知性・理性となり、民主的共立のための知・真理となるだろう。
 ここで補足すると、スピノザ哲学は、メディア界的共通概念からイデア界的理念へと志向しているのであり、不連続的差異論のあり方と重なる面があるのであるが、何度も繰り返すことになるが、スピノザ哲学の究極の「存在の一義性」の理念(神=実体)が、連続的なのか、不連続的なのか、不明確である点である。不連続的差異論から見ると、スピノザ哲学は、イデア/メディア境界を根底にしているのであり、正確には、イデア界に達していないのである。ドゥルーズスピノザ哲学を最高度に評価した理由もここからわかるだろう。ドゥルーズ哲学自体が、きわめて、スピノザ的な連続性と不連続性の両義性を帯びているからである。


参照1:
「 toxandria氏の以下の論考は、不連続的差異論に通じるものがあるように直観される。」
http://ameblo.jp/renshi/entry-10008530019.html


「日本のマスメディアに欠ける、「政治体制の妥当性評価」の視点」
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060129/p1
『toxandriaの日記』
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参照2:『松岡正剛の千夜千冊』「マイケル・ポランニー
暗黙知の次元』」
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1042.html


暗黙知の次元』google
http://www.google.co.jp/search?num=30&hs=cm0&hl=ja&client=firefox-a&rls=org.mozilla%3Aja-JP%3Aofficial&q=%E6%9A%97%E9%BB%99%E7%9F%A5%E3%81%AE%E6%AC%A1%E5%85%83&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=lang_ja
『原始神話学』google
http://www.google.co.jp/search?num=30&hs=VTL&hl=ja&client=firefox-a&rls=org.mozilla%3Aja-JP%3Aofficial&q=%E5%8E%9F%E5%A7%8B%E7%A5%9E%E8%A9%B1%E5%AD%A6&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=lang_ja


「相対性の復権相対主義の陥穽ーーフッサール間主観性現象学の問題圏にて」浜渦 辰二  著(静岡大学人文学部http://www.hss.shizuoka.ac.jp/shakai/ningen/hamauzu/soutai.html