二つの視覚:内的ヴィジョンと外的ヴィジョンの一致としてのイデア的
二つの視覚:内的ヴィジョンと外的ヴィジョンの一致としてのイデア的ヴィジョン
テーマ:文学・哲学・美術
1)ヴィジョンの問題:アレゴリーとシンボル:イコノグラフィー、イコノロジー。
A. プラトンのイデア、ニーチェのアポロとディオニュソス
B. 中世のアレゴリー(抽象観念・道徳観念)
C. ルネサンスのアレゴリーとリアリズム(美徳観念と感覚表現)
D. ルネサンスの問題と唯美主義(ウォルター・ペイター、J=K・ユイスマンス、オスカー・ワイルド)
E. モダニズムとポスト・モダン(T.S.エリオットとD.H.ロレンス:カズオ・イシグロの『日の名残り』)
仮説:二つの視覚(目の視覚と触覚の視覚):外界的視覚(外観・外向的視覚)と内界的視覚(内観・内向的視覚)
古代的ヴィジョン(イデア)とは、二つの視覚の交差点のあるのではなかったか。つまり、ニーチェの用語を借りると、外観がアポロで、内観がディオニュソスである。この両面が結合した視覚を古代ギリシア人はもっていたのではなかったか。
しかし、中世では、内界的視覚、つまり、精神性が強調されて、外界的視覚が軽んじられたのではなかったか。
そして、ルネサンスにおいては、学芸復興ということで、古代ギリシア的な心身性、二つの視覚が蘇ったのではなかったか。
しかしながら、ヨーロッパは、ルネサンス以降、近代主義を発達させて、外界と内界を分離(乖離、分裂)させる。観念と物、心と身体、との二元論である。つまり、ルネサンスにおいて、復興した内外統一文化が解体して、分裂したと考えられるのである。精神と物質の分離である。近代合理主義・近代科学と人文主義・精神文化の分離(二つの文化)が生起した。
そして、18世紀後半において、近代合理主義の流れとして、啓蒙思想が起こり、また、人文主義や精神文化の流れとして、ロマン主義が起こる。複雑なのは、イギリス・ロマン主義においては、近代合理主義の理性と精神文化の精神的感性との統一が目標とされたことである。自然の理性と感性との一致が目指されたと言えるだろう。しかし、時代は、近代合理主義、近代科学・技術、近代的資本主義が主潮となるのである。この中で、反近代合理主義として、ロマン主義の系譜の唯美主義や世紀末を見るべきだろう。しかし、それらの運動は単にアンチ(反動)ではなくて、理性と感性の一致という総合性を積極的に志向していたと言える。
とまれ、反近代主義は、ルネサンスの二つの視覚の結合を継承し、探求・追求するものであったと考えられるのである。ここで、イギリス文学は、外観と内観を併せ持つ機能を帯びることになった考えられるのである。二つの視覚の結合の表現としてのイギリス文学(ケルト・ブリテン文学)である。そのために、文学がきわめて美術・絵画的なものとなったと考えられるのである。そして、今日の講義で見るウィリアム・ブレイクは、正に、詩人であり、彫版師・画家なのであった。
2)ウィリアム・ブレイク(1757〜1827)
一)生誕と少年時代(1757〜1782)
11月28日に、ロンドンで、靴下商のジェイムズの三男として生まれた。
少年時代に、ヴィジョン(幻視)を見た。たとえば、一本の木の下に天使が群がっているの見たと言ったために、父親に殴ると脅かされたという話がある。
10歳から四年間、ヘンリ・パーズの画塾に通った。
1772年:彫版師のジェイムズ・バザイアのもとに入門した。
1779年:ロイヤル・アカデミー付属美術学校の研究生となる。
初代院長は、ジョシュア・レノルズであった。彼の教えをブレイクは憎悪した。
二)結婚から処女詩集まで(1782〜1787)
失恋後、キャサリンという女性と結婚した。
1783年『詩的素描』が書かれたが、出版されなかった。
三)ポーランド・ストリート時代(1785〜1790)
1788年 最初の彩飾印刷本を出版する。
『自然宗教はない』
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/work.xq?workid=nnr&java=yes
『すべての宗教は一つ』
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/work.xq?workid=aro&java=yes
1789年(フランス革命が起きる。)
『無垢の歌』
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/work.xq?workid=s-inn&java=yes
『セルの書』
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/work.xq?workid=thel&java=yes
四)ランベス時代(1790〜1800):テムズ川の南岸にランベスがある
『天国と地獄の結婚』
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/work.xq?workid=mhh&java=yes
『アルビオンの娘たちのヴィジョン』
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/work.xq?workid=vda&java=yes
1794年 『無垢と経験の歌』
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/work.xq?workid=songsie&java=yes
五)フェルパム時代(1800〜1803):イギリス南部のサセックスのフェルパム村
訴訟事件(兵士スコウフィールドとの訴訟)
六)サウス・モウルトン・ストリード時代(1803〜1821):ロンドンに戻る
★『ピカリング稿本』の作品:後期予言書:『ヴェイラ、又は四つのゾア』、
『ミルトン』
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/copy.xq?copyid=milton.c&java=yes
『エルサレム』
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/copy.xq?copyid=jerusalem.e&java=ye s
★ロバート・ブレアの『墓』への挿絵
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/copy.xq?copyid=bb435.1&java=yes
★個展を開くが、一点も絵が売れなく、惨憺たるものであった。
七)ファウンテン・コート時代(1821〜1827)
「『ヨブ記』への挿絵」の完成後、『神曲』への挿絵の仕事をするが、
下絵102枚を残して、8月12日亡くなる。
「『ヨブ記』への挿絵」
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/copy.xq?copyid=bb421.1&java=yes
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/copy.xq?copyid=but551.1&java=yes
「『神曲』への挿絵」
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/copy.xq?copyid=bb448.1&java=yes
http://www.blakearchive.org/exist/blake/archive/work.xq?workid=but812&java=yes
ブレイクの作品のアーカイブ
http://www.blakearchive.org/blake/indexworks.htm
注:以上のブレイクの年譜は、『ブレイク詩集』(松島正一編、岩波文庫)のブレイク略伝から作成したことをお断りしたい。
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コメント
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■中世の内界的視覚と精神について
中世の精神とは、何か。
また、アレゴリーとは何か。
そう、精神とは何か。
道徳とは何か。
抽象観念とは何か。
思うに、内界的ヴィジョンを、主体側に反映させたものではないのか。
そう、即非性の主体的側面ではないのか。即非性の客体的側面は、シンボルではないのか。即非という真光の主体面がアレゴリーで、客体面がシンボルではないのか。
後で検討したい。
renshi (2006-12-13 00:01:47) [コメント記入欄を表示]
■アポロとディオニュソス
アポロは、i⇒-i であり、
ディオニュソスは、-i⇒i ではないだろか。
否、違うだろう。
即非ヴィジョンにおける、光がアポロであり、闇がディオニュソスではないだろうか。
つまり、i*(-i)におけるiの側面がアポロで、-iの側面がディオニュソスではないのか。
分かりやすく言えば、i がアポロで、-i がディオニュソスではないだろうか。
後で検討したい。