細菌ゲノム、完全合成 米チーム「人工生命」に前進

研究資料として、ここに転載します。




細菌ゲノム、完全合成 米チーム「人工生命」に前進

2008年01月25日10時00分

 細菌のゲノム(全遺伝情報)を人工的に合成することに、米クレイグ・ベンター研究所のチームが成功した。これまで、より原始的なウイルスでの成功例はあったが、自己増殖能力を備えた生物である細菌のゲノムを人工合成したのは初めて。人工合成ゲノムを実際に働かせることができれば、細菌の人工合成につながるだけに、「人工生命」づくりに向けた大きな前進だ。米科学誌サイエンス(電子版)に25日、発表する。

ゲノムの人工合成の概念図

 人工合成したのは「マイコプラズマ・ゲニタリウム」という細菌のゲノム。

 チームはまずゲノム全体の8分の1〜4分の1の大きさの分子を試験管内で化学合成。これらの「部品」を大腸菌に入れ、遺伝子組み換えでくっつけ、大きな部品をつくった。さらに大きな部品を酵母の中で同様にくっつけ、完全なゲノムを合成した。

 生物の設計図であるゲノムの人工合成は、特定の能力を備えた「人工生命」づくりの前提となる技術。バイオ燃料を製造したり、有害廃棄物を分解したりするのに必要な人工微生物づくりなどへの応用が期待されている。

 人工生命づくりには、合成したゲノムをどうやって働かせるかなどの課題はあるが、チームは昨年、ある細菌のゲノムと別の細菌のゲノムを入れ替えることにも成功しており、こうした技術との組み合わせで「人工生命」が誕生するのも時間の問題、という見方も広まってきている。

 しかし、人工生命はテロへの悪用、自然界への悪影響などの懸念がつきまとう。

 国立遺伝学研究所の小原雄治所長は「生命のデザインを可能にする大きな一歩だ。ただ、人工微生物を人間が制御できなくなったときにどう対応するのかなど、二重、三重の安全対策を考えていく必要がある」と話す。 http://www.asahi.com/science/update/0124/TKY200801240478.html


人工DNA合成に成功 有用と悪用の両刃の剣
2008.1.25 20:08

 生命の設計図であるゲノム(遺伝情報)の解読データがわかれば、人工的な化学合成で目的の生物が作り出せる−。米民間の「J・クレイグ・ベンター研究所」(メリーランド州)の研究チームが技術開発に成功したのは、そんな「神の技」ともいえる生命科学の領域だ。体細胞からどんな細胞にも成り得る人工多能性(iPS)細胞の技術が登場するなど新たな生命操作の技術が開発されるなかで、またひとつ、人類に役立つ可能性がある技術が加わった。

 ゲノムは4種類の物質(塩基)を1列に長くDNA上に並べて、わずか4種類の文字で書かれた暗号のように遺伝情報をつづっており、この情報をもとに生命活動が行われている。

 今回の研究は、このDNAの塩基の配列を人工的に化学合成して再構成したもの。微生物のなかでも塩基の数が少ないウイルスではすでに合成されているが、塩基数の多い細菌ではできなかった。しかし、人などに寄生しないと生きられないウイルスに対し、自己増殖する能力を持つ細菌のゲノムの合成技術開発は、生命の基本型を作り出すともいえる。この点で今回の成功は大きな意味を持っていた。

 ゲノム解析で知られる榊佳之理化学研究所ゲノム科学総合研究センター長は「自己増殖の能力がある細菌でDNA合成ができたことは重要な進歩です。あらかじめ遺伝情報を設計して合成し、DNAを抜いた細菌のカラ(容器)に改めて入れて機能させる方法などが考えられる」と評価する。

 ただ、遺伝情報を一から設計して、地球上に存在しない生物をつくるという技術は、食料や燃料の増産など有用な研究であるとともに、生物兵器などに悪用されたり、自然界の遺伝子とまざって環境を変化させたりする可能性もある。影響が大きいだけに、研究の歯止めとなる国際的な基準を早手回しにつくっておくことが求められる。
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080125/acd0801252008005-n1.htm


2008/01/25-04:52 細菌ゲノムを化学合成=「生物創造」に近づく実験も−米民間研究所
 細菌の全遺伝情報(ゲノム)を初めて化学合成したと、米民間の「J・クレイグ・ベンター研究所」(メリーランド州ロックビル)の研究チームが25日、米科学誌サイエンスの電子版に発表した。化学合成したDNAの断片を大腸菌の人工染色体を使ってつなぎ合わせ、酵母内で完成させた。このDNAを取り出して細菌の細胞質に移植し、生きて活動させる実験も進めており、成功すれば「生物の創造」に近づく成果となる。
 同研究所は、ヒトゲノムの解読で知られるクレイグ・ベンター博士(61)が設立し、研究チームも同博士が率いる。新しい医薬品やワクチンの開発、バイオ燃料の効率的生産、有毒廃棄物の分解などに役立つ自然界にない細菌を生み出すのが目的と説明しており、役に立つことが期待されるが、一方で生物兵器、犯罪への悪用や流出事故が懸念される。同研究所はこのため昨年10月、合成DNAの販売企業、研究機関、利用者を対象とする規制制度を検討した報告書を公表。合成DNA研究は日本を含む各国で行われており、国際的に協調した規制が必要になりそうだ。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2008012500057